「チハルはどうして私の所にこんなに来てくれるの?」

「え。」

ある日茜がこう言った。

茜は相変わらず毎日絵を描いていた。

胸像のデッサンは終わり、今は北海道の山と、その眼下に広がる水田と家を写真におさめたポストカードを油絵で描いていた。

茜と出会って、二ヶ月ばかりすぎた頃だった。

茜は始めのようなよそよそしさもなく、すっかり私と敬語なしでしゃべってくれるようになっていた。

二ヶ月の間に、夏はすっかり過ぎ去り、通り過ぎる風や、目に入る景色に秋の気配を感じる。

制服も、冬服の長袖になり、茜はセーラー服の上に薄手のカーディガンを羽織っている。

薄いピンク色のそれが、茜の雰囲気にぴったりだった。