「ねぇ。」

「はい。」

私は戸口で振り向いて、やはりこっちを見ていない茜に声をかける。

「あのさ、また来てもいいかな。」

茜はきょとんとした顔をした。

私は何か検討違いなことを言ったのだろうか。

少し顔が熱くなってきたとき、

「はい、いつでもいらしてください。」

茜は満面の笑みで言った。

今度はしっかり私の方を向いていた。茜の目が私の姿を捕らえていた。

私はそれだけで満足した。

一つ頷いて、そのまま部屋を出る。

また、心臓が激しく鼓動を刻み始めた。

私は走り出し、心臓の動きを走っているせいにすることにした。

あの、キャンパスに向かう茜の姿が頭に綺麗に浮かぶ。

もう一度会えるだろうか。もう一度あの声を聞けるだろうか。

もうすでに茜に会いたくなった。