「バイバーイ」 後ろからの梓の声。 俺は振り向きもせず、軽く手を挙げてそれに応えただけ。 ……思い出した。 誕生日、前日の夜。 試合前のウォーミングアップ中。 真新しい制服に袖を通した朝。 スタートラインに立ってゴールを見つめた瞬間。 何かが起こりそうな、そんな予感がして、心も、体も、小さく震えるみたいに。 そのときの感覚と、どこか似てるんだ。 梓といると、胸の奥がくすぐったくなる。