もう何年も前のこと。 美佐子が覚えていただなんて思ってなかったから、なんだか胸の奥がくすぐったい。 「どこ、食いに行く?」 道のでこぼこを避けながら自転車を走らせる。 「どこって…。あんたが作るの!忘れたの?『いつでも作ってあげるね』って言ったくせに」 「そんなこと言ったっけ?」 そこまで覚えていない俺は首をかしげた。 「言った!絶対言った!約束、守ってよね」 むきになる美佐子。 きっと、眉間にシワを寄せて唇を尖らせているだろう。 見なくても想像はつく。