声をかけるとほとんどの人が言う通りにした。けど、一人だけ信じてくれない子がいた。


「家頼さんが嘘をついてないって証明できるの!?」


「嘘をつくとは思えないよ。それにまだ爆発音はしてないでしょ。殺されてないってことだよ」


「先生が何も言わないって怪しいでしょ!」


青野さんはなかなか信じてくれなかった。
車の間で私たちは口論していた。らちが明かない。


「なら、捕まった人のところを見に行こう。自分の目で確かめるんだよ」


「はあ?途中で捕まったらどうするの?」


「そうならないよう私が守るから」


青野さんはため息をついた後、周囲を見回した。二人で車の間から出て、捕まった人を見に行く。


「青野さん~大丈夫だよ~!」


「こっちに来て~」


長楽さんと真壁さんが手を振って呼びかける。そのとき先生は運動場の方を見ていた。
青野さんは納得したらしい。速度を落とし、捕まった。


見ると、私以外の人は皆捕まっていた。
後ろから気配を感じる。捕まってと言ったのに、反射的に避けてしまった。


「あっごめん」


二回目で私は捕まった。あー疲れた。けど、このくらい大丈夫。走らない時間も挟んでいたからか、持久走よりはましだ。
これで鬼ごっこは終わり。授業が終わるまであと三十分もあるけどどうするのかな?


「皆さんよく頑張りました。結果は男子の圧勝ですが、これが体力の違いというものです」


まあぶっちゃけ捕まるよう呼びかけたからこうなったんだけどね。心の中ではあははと苦笑いしていた。
もしも普通に鬼ごっこをやっていたらどんな結果になったんだろう。


「その中で最後まで頑張っていた人、岩手さん、前に来てください」


前に……!?ゾッとして鳥肌が立った。そんな、まさか……。


震えながら前に出た。


「これが逃げ続けた時間です。先生の予想以上でした。最後まで残った岩手さんの健闘をたたえます」


先生がストップウォッチを見せる。あっ、普通に表彰だけか。よかった。そうだ、殺される理由はないもん。ルールは守ってたはずだからね。



「が、あなたのように飛び抜けて強い女子は必要とされていません」


足元に爆弾を落とされた。


待ってよ!私ルールは守ったよ!?飛び抜けて強い!?それの何が悪いの!?
必要とされていないと言われるのはショックだった。必要とされていないなら、死んでも悲しまれないの……?