外は寒く強い風が吹き付け、私たちを冷やした。


「なんでこんな日に体育すんのよ……」


「早く終われ……早く生きて帰りたい……」


身を縮こまらせ不満と不安をこぼしていた。
ぞろぞろと男子が来た。時計を見るともうそろそろチャイムが鳴ると思った。


チャイムが鳴り、先生が体育館の倉庫から出てきた。首にはストップウォッチを下げていた。


「集合ー!」


先生の前に四列で集まった。
準備体操の後、先生が説明する。今日はなぜか鬼ごっこで、男子が鬼、女子が逃げるらしい。


バランスがおかしい。これじゃすぐに大半が捕まる。
捕まったら殺されるのかもしれない。体力は一日でどうこうできるものじゃない。こんな手をつかってくるなんて……。


私は唇をかみ、何かいい方法はないか考える。
そうだ、逃げるのが苦手なら、最初から見つからなければいいんだ。


逃げられなさそうな子を隠し、運動が得意な子は鬼を引き付ける。
逃げるときは二人以上で連携して、負担をかけすぎないようにする。
もちろん私は鬼を引き付ける。


鬼ごっこは五分後始まる。男子は今の時間で、女子が逃げそうなところに移動する。
女子を集め、作戦を話した。


「そうか、でも隠れるところが少ないよ。見つかったら逃げ場がないってこともありそうだし……」


「そのときは拳で抵抗する?」


「触ったらアウトなんだって」


話し合うけどなかなかいい案は出ない。家頼さんが渋い表情をしているのが気になって、声をかけた。


「家頼さん、何か言いたいことはある?」


「え……ああ、いや、そのですね……死なない条件について考えていたんです。捕まらないことが条件なら、体力にも差がありますしほとんどの人が死にます。けど、先生は全ての人を殺そうとしている訳じゃないと思うんです。この鬼ごっこで、どんな生徒を残そうとしているのか……」


私は捕まらないことが条件だと思い込んでいた。先生は規律を守ってほしい……なら、この鬼ごっこで、生き残るために手段を選ばなかった子を殺そうとしているのかもしれない。


家頼さんの言葉を受けて、立ち上がりみんなに呼びかける。


「鬼ごっこではルールを守ることを最優先しよう!捕まりそうだからといって、相手が怪我しそうな抵抗はしない、立入禁止の場所には入らない!」


「てことはどのみち拳で抵抗はだめなんだね」


もうそろそろ鬼ごっこが始まる。皆立ち上がり、散り散りになる。


鬼ごっこでの方針は一応決めたけど、何が正解なのかわからなくて、暗闇の中をさ迷っているかのようだ。


嫌な予感がする。
いや、私が信じないと!皆に指示を出した私が……!