「起立、よろしくお願いします」


とっくになくなっているはずだった授業はまだ行われる。日直の仕事もほとんどなくなるはずだったけど、日直の杉野は渋々立って号令をかけている。


男女別のプリントを配られ、まずは男子のプリントが送られてくる。一枚も取らず後ろの男子に渡す。
次に裏表印刷されているプリントがきた。後ろに渡してから目を通した。


うんざりするくらい細かい。それに対し、男子は表にしか印刷されていない。
命かかってる上に要求も細かいのか……。


でも書かれていることはばっちりやっている。
まず服装検査をするということで、机を後ろに下げ、男女別の名簿順に並ぶ。


男子の服装検査はぶっちゃけザルだった。制服の第一ボタン閉まってなくてもOKなの?


女子の服装検査はじろじろ見られ、髪の毛が少しはねていただけでも指摘される。
折らないスカートの丈に違和感を覚えながら、先生の視線に耐える。先生は何も言わなかった。よかった、多分OKだ。


最初に指摘があったとき、ダメなんじゃないかと思って血の気が引いた。そして、なんでそこまで気を使わなかったんだと自分を責めた。


けど、先生はそれだけ言って次の子に移った。大丈夫……だったの?後から……なんてことはないよね?
不安だったけど、次第に根拠のない安心感が広がった。


「服装検査は終わりです。次は正しい挨拶について教えます」


よし、今のところは全員無事だ。
これもまた男女別でやるらしく、男子はほめられるのに対し、女子は滑舌も声のトーンも指摘される。


「家頼、声のトーンが低い。岩手は高い」


家頼さんは私と反対で声が低かった。そのせいで暗いと思われたり、合唱ではアルトパートしかやったことがないと言っていた、


家頼さんはもたつきながらも声のトーンを上げ、私も演じるときのように下げた。