ということは、この紙は無駄っていうことか。
私は小さく折り畳み、机の引き出しの奥に入れた。


聴き慣れたドアの音がした、お母さんが帰ってきた。
買い物袋と可愛いデザインの紙袋を提げていた。


「おかえり」


「ただいま」


お母さんは袋を床に置いて、パンプスを脱ぐ。


「その紙袋は何?」


「これ?日山先生にあげるお菓子。受験の時もお世話になったからねー」


ドキンと心臓がはねた。
そういえば今日、日山先生を見てない。深見たちが行ったときもいなかったって……。


もしかして、日山先生は今日学校に来ていない。休みとは聞いていないけど、もし来ていたら国から言われても止めている。


今日はこの学校に来て四年以上経っていない先生を見てない。
それに対し、生徒を殺した先生は両方とも十年この学校にいた。


何か他に共通点が見つかるかもしれない。
私は自分の部屋に駆け込み、先生について知っていることを書き出す。


まず、この学校に十年いる。
後は……同じくらいの歳なのかな?


それくらいしかわからない。他のクラスの先生はどうだったのかな?
他のクラスの友達に電話で聞く?でもこんな夜にかけるのもな……。


あっ、友美ちゃんなら大丈夫かもしれない。友美ちゃんはこの時間によくかけてきたから……。


友美ちゃんももう進路が決まっていたから、勉強もしていない。
ゲームしてる途中だったら怒られそうだけど……。


間違えないよう慎重に押す。


「はいはい、もしもし~。春菜、どうしたの?」


「あのさ、今日……ゲームを始めるとか言われなかった?そのときの先生は……」


「与田先生だけど、その話はもうしないで」


早口で言った後、ガチャンと切られた。
そうだよね。こんな話したくないよね。


でも、与田先生か……。教えてもらったことがない。そもそも二年生の先生だから。与田先生も学校に来て六年だ。やっぱり四年以上いる。


四年前に何かあったのかな?入学する前の話だから知らなくて当たり前だけど……。


よし、パソコンで調べてみよう。