死にたくない。けど、死ぬ可能性はゼロじゃない。
今の内に身辺整理しよう。
まず物の多い机から手をつける。机にはファイルが並べられていた。そのファイルを全部取りだし、中身を見ていく。


これはダメ。恥ずかしい。
昔一ページだけ描いた漫画をゴミ箱に捨てる。絵も下手だし字も汚い。何より場面が恥ずかしい。これも捨てよう。服のセンスが痛い。これも痛い。


死後恥ずかしい思いをしないよう、黒歴史を次々始末していく。絵や話を書く人はどうしても黒歴史が蓄積してしまうのだ。


最後にはゴミ箱がいっぱいになり、袋の口をぎゅっと結んだ。
そしてゴミ置き場に置きにいく。


「部屋の掃除でもしたの?」


「うん」


お母さん、中身は絶対に漁らないでね。
何でもない風に返事しながら、心の中で念を押した。