前駆たちの望み

家に帰り、電話帳を広げて片っ端からかけていく。
最後は家頼さんだ。辛いことを思い出させるから、かけるのを躊躇していた。
でもできるだけ早くにかけた方がいいよね。遅くになればなるほど、夜に不安になるし期待も裏切る。


電話番号を押し、誰かが出るのを待つ。


「もしもし、岩手さんどうしたの?」


「家頼さん、連絡したいことがあって……明日休んだら先生が理由を聞きに来る。ズル休みだったら多分殺されるから、明日はよほどのことがない限り来て!あと警察にも通報しないで!」


「……わかった。ありがとうね」


「それじゃ、切るね」


家頼さんの気持ちを考えるといたたまれなくなって、受話器を戻し、部屋に戻った。
ベッドに飛び込み、沈んでいく。思い返すと、結構失礼だったなと思った。急にかけてこっちから急に切るんだもん。


あのときの家頼さんの声はしっかりした話し方の、落ち着いた声だった。けど、内心はそうじゃないはず。


嫌だと叫びたいけど、そんな力もなくなったし、恐怖で思う通りにならない。私と同じように、ただ悲しみに暮れている。


全員で休んでボイコット、なんて出来たらいいけど、うまい言い訳も思い付かないし、正直に言ったら殺される。
学校に行けば取り合えず助かるかもしれないから行くだけ。学校はもう楽しいところじゃなくなった。


いつか同窓会を開こう、なんて言ったあの頃に戻りたい。炎天下、大声を出した体育祭に戻りたい、合唱コンクール直前の練習中に戻りたい。


明日があると信じきっていた頃に戻りたい。