漫画を読み込んでいると、時間の入れ替わりを告げる時計の音が鳴った。もうそろそろ昼食にしようかな。手をついて怠惰な体を起こす。
台所にはカップ麺が置かれていた。それにお湯を注ぎ、三分待ってから食べる。


明日もカップ麺でいいかな?夜更かしして昼頃に起きて、これとおにぎりとかで生きていける。もう学校休んだ日というより休日って感じだね。
麺をすすり、残り少なくなってきたら、底をかき混ぜて浮いてきた具を掬う。


お茶を飲んで一息ついたら、また部屋に戻って漫画を読み始めた。


四巻を読んでいる途中に電話がかかってきた。
もしかしたらお母さんかもしれないと思い、紙を握りしめ、階段を駆け降りた。


「はい、もしもし」


「もしもし、春菜ちゃん?」


胸が暴れるけどためらう間もなく電話に出ると、同じクラスの友達、神坂 奈可(みさか なか)ちゃんだった。
この紙はまだ必要ないか。私はすぐ横の机の上に紙を置いた。


「あのさ、明日はよほどのことがない限り学校にきてほしいみたい」


「え?」


よほどのことがない限り……あのゲームが嫌だから、は入らなさそうだ。
そう釘を刺されてもあの先生たちのことだから驚かないけど。

「何で……」


「今日深見たちが聞きに言ったんだけど、日山先生がいなかったらしい。それで山橋先生に聞きに行ったら、そう伝えられたらしい。休んだら家に来て、休んだ理由とか聞きに来るって」


仮病を使えない!
私の安全地帯は崩れ去った。あの地獄に行くしかないんだ。


「それで他にも言いたいことが……。警察に通報したら、殺すって……」


私は息をのんだ。
そんな脅しが通用すると思ってるの!?通報して逮捕されてしまえば殺すこともできない。先手必勝だ!


「先生はそれで、バレずに済むと思ってるのかな?五人以上死んでるのに親が気付かないとかあり得る?」


「これ、国に言われてやってることらしい……他の学校の友達も、殴られて閉じ込められた後、帰ってきてない人がいるって……」


国は何を考えてるの!?三年生の女子だけ殺して……。
少子化に悩んでるのに子供をこれ以上減らしてどうするの?未来ある若者を殺してどうするの?何のメリットもないし、考えが全くわからない。

本来私たちを守るはずの国がやっているなら、私はどこに助けを求めればいいの?外国?いや、こんなこと信じてくれるかな?
でも外の誰かが信じてくれなければ、こんな許されないことが放置されるままだ。

「とにかく大人しく過ごすしか無いって……他の子にも連絡しないといけないから、切るね!」


可奈ちゃんは慌てた様子で切った。
意味がわからないよ。

助けを求めることができないと思うだけで、心が押しつぶされそうなほどの恐怖に襲われる。嫌だ、死にたくない……そんな言葉が飛び出てきそうだけど、聞かれなくないから必死に呑み込む。

恐怖が詰まった心をぎゅっと握られて、今にも破裂してしまいそうだった。