やっぱり俺が一番子供っぽいか?
机の上に並ぶものを見て考えた。千代田はイキってコーヒーを飲んでいるんじゃなくて、本当に好きだから飲んでいる。


俺はコーヒーのよさがわからない。
こういうところで精神年齢に差があると思われるんだよな。


ざっくりしたタルトを切って口に運ぶ。千代田はすました顔でサンドイッチを食べ、仙道はカップをソーサーにのせる。


「本当は桜の木の下で渡したかった」


仙道がポツリと呟いた。


「ジンクスでは桜の木の下でだったな」


「あんな校舎の影で、泥まみれで……」


仙道のジャケットに涙がこぼれ落ちた。
こんなの見たくなかった。この日はこんな涙を見る日じゃなかっただろ!?


早く俺が先生に話しかければ、先生の手は止まった。その間にスイッチを奪えば助かったかもしれない。
もし先生なんか恐れず、最後まで粘ってスイッチを奪っていれば、五人は助かったかもしれない。


選ばなかった選択肢が今になって姿を現す。
上手くいくという確証はないのに、どうしようもなく惹かれてしまう。