服装検査は男女別で、名簿順だった。
男子が先で、特に注意もないまま進んでいく。


仙道の番だ。
先生は額の前髪を見て沈黙する。
仙道の額とこめかみには白髪がまとまって生えていた。地毛だ。


「地毛ですが?」


仙道が睨むと次の人に移った。
仙道に睨まれると、例え染めていたとしても何も言えない。


そして、千代田の番も来た。
靴汚いな。卒業式どうするんだよ。放課後も作戦があるのに……一晩で乾かせるのか!?


「あの、靴それで大丈夫ですか?」


「大丈夫です。このままいきます。この汚れも思い出ですから……」


千代田は髪をかき上げ、窓の向こうの青空を見ながら言った。
笑いを堪えきれず、何人か吹き出した。こんな重苦しい空気の教室で、急にあんなことを言われたらいつも以上に笑けてしまう。


その中で一人だけ暗い表情の女子を見つけた。足を見ると、派手な柄の靴下を履いていた。
そういえばこの子は昨日休みだった。


よし、俺の番だ。見てろよ!


「先生、トイレ行くので先に進んでください」


俺は廊下に出るふりをして、女子のところにいく。
女子の肩を叩き、即座に靴下を脱ぐ。


「これ使え」


「え?」


「命に関わるんだ。とにかく使え」


「……ありがとう」


女子は不審に思いながらも履いた。
冬だったからまだよかったけど夏だったら最悪だ。けど渡したあれも歴戦の靴下だ。思い出が染み込んでいる。


静かに廊下に出て、女子の靴下はどこに置こう。
少々埃っぽくなるけど、カードゲームが好きだった先輩が作った隠し穴に入れた。
この隠し穴はデッキより少し大きい。いつもは紙で塞がれている。


この学校は壁を壊されても、直す金をケチって紙で塞いでいた。
それを利用して、紙を完璧に貼れば気付かれない隠し場所を作った。


先輩、いつも感謝してます!
これがくるぶし丈でよかった。丸めて穴に突っ込む。