先生もいなくなったことだし、紙を読もうか。
ファイルの中の紙は神威の字で、今日の放課後スイッチを奪う、と書かれていた。


これ今からでもいいんじゃないか?
男子だから授業を抜け出したって死なないし、気付かれないように奪えばいいだけだ。


奪えば皆殺されずに済むんだから、放課後まで待ってられないだろう。見つかったら鬼の形相で追っかけてくるだろうけど。


ゾッとするな。
漫画みたいにカードバトルで時間稼ぎもできないからな。そもそもこの学校の大半の人がデッキを持ってきていない。


時間稼ぎが必要になったらどうする?正当防衛と言ってもやり過ぎたらこっちが捕まるよな……。


放課後先生を誰もいない廊下に呼び出し、突き当たりに追い込む。そこで交渉し、駄目だったら奪う。
先生を拘束するのは仙道と能取。千代田がその間に奪う。


まじか。頑張れば出来ると思うけど、追い込まれた人間って何するかわからないからな……。
隙を見せたら体が腫れ上がる。多勢に無勢で、相手が女だとしても……。


声をあげられて、仲間が来たら終わりだからな。
二人に口を塞ぐことを提案しよう。
座っている仙道と立ってスマホの画面を見せつける千代田に話しかけた。


「何?」


「拘束した時、声を聞かれて他の先生来たら終わりだろ?だから何かで口を塞げないか?」


俺が提案すると二人が考え込む。
顔をあげた千代田がニヤッと笑った。


「確かに。じゃあ後ろからこのハチマキを……」


必勝ハチマキを取り出しひっぱった。


「前から何か突っ込め。後ろの負担が大きいんだ」


俺と同じく後ろから抑える役の神威が上目遣いで言い放った。


「それは無理ゲーだな。手を噛まれたら奪えないぞ」


「ならハチマキをまわす間、お前も抑えるのを手伝え」


「それが一番だな」


千代田も納得したようだ。