前駆たちの望み

「千里!起きなさい!」


寒い朝に布団をはがされ、温かかった空間が急激に冷える。
寒さから身を守るバリアが破壊されたようだ。


「珍しいねぇ、千里が起きないなんて。七時になったらお日様を浴びてぱっちり起きるのに」


確かにいつもは自分で起きる。昨日あんなことがなければ、今日もちゃんと起きた。


机には塩鮭と味噌汁、ご飯と海苔があった。


「お兄ちゃん、箸を使いなよ」


海苔をご飯をのせ、手で掴むと妹に注意された。


「俺の勝手だろ」


「千里、家の中ではいいけど外でやらないでね」


手で掴んで食べるのは普通じゃないのか。けど箸を使うと海苔が割れてうまく包めないだろ。
そう思いながら親指についた米粒を食べた。

誰も命を落とすことがないこの時間が、今はとても貴重に思えてきて、見慣れた家族の顔が心にしみる。