いつもの待ち合わせ場所に二人の姿はない。
素通りしようとしたところで呼び止められた。


「春菜ちゃん」


「茜ちゃん……」


傷が残る自転車を引っ張った茜ちゃんがいた。タイヤは一日で変えたらしい。
茜ちゃんが数歩進んで、立ち尽くす私と肩を並べた。二人で話しながら、最後の登校をする。


「四人で行きたかったな」


「うん」


心の底からうなずいた。
四人で行って四人で帰るつもりだった。それなのに、二人は卒業式にも出れないなんて、不公平だ。


「今日は何もないよね?」


いつも平静を保つ茜ちゃんが不安そうに聞いてくる。そりゃそうだよね。


「何も起こさせない」


「春菜ちゃん?」


不意に言葉を発した私に驚いている茜ちゃんをよそに、ブレザーの襟をつかんで決意した。
これ以上、私の目の前で命を奪わせない。