前駆たちの望み

「愛実ちゃん、可矢ちゃん……」


私は結局助けることが出来なかった。二人を家に帰すことが出来なかった。


頭に一発。
運動場に血を流して倒れこんだ。二人はおり重なっていた。


「片付けは……」


「私がやります。一人でやります」


先生の言葉を遮り、冷たい空気を突っ切っていく。


「青葉さんがやってくれるみたいだし、それでは、勝った男子チームに拍手~」


皆が無理矢理拍手している間、私は可矢ちゃんを背負う。
ごめん、愛実ちゃんはちょっとだけ待ってて。


可矢ちゃんの体重がかかってくる。体格はそれほど変わらないけど、自分くらいある子を運ぶのって難しい。可矢ちゃんはもう、私の体をしっかり掴めないし。
それでも、私がやらなければ。


私は可矢ちゃんを前に持ってきて抱き上げた。わかってるけどやっぱり、重いよねとかごめんねとか、うんともすんとも言わない。


学校には裏口がある。そこの近くまで運んで行って、放課後裏口から出る。
そこで警察を呼んで変わり果てた二人を見せる。言い逃れはできないはずだ。


私が疑われるかもしれない。けど、私が殺したようなもんだ。
私がうまくやっていれば助かったかもしれない。


急な階段を登り、校舎裏に来た。
もうすぐで裏口だ。


そこで腰を下ろした。もう少しだ。時間はかかるけど出来ないわけではない。


腕を見ると血がついていた。この部分は頭に触れていたなあ。


腕をぼーっと見つめていると、ガラガラと音がした。


「どう?あなたには無理でしょ?」


無理じゃない!裏口まで運んでここで起きていることを明かせる!
そう言ってやりたかったけど、言えない。私より先生の方が早いのは事実だ。こんな風に自分の無力を突きつけるなんて……悔しい。


リアカーには他の子も折り重なっていた。愛実ちゃんの姿は見えない。けど色素が薄くて印象に残っていた川良さんの髪が見えるから、この中にいるはずだ。


「それでいいの。ほら、ここに載せなさい」


先生無しで裏口まで運べば残せるかもしれない。証拠隠滅のため体が残らなかったら、家族が最後に顔を見ることも出来ない。


見つかった時点で、裏口に行くのは不可能だ。


そんな考えが浮かんだ。
もう無理だ。


私は死体の山にそっと下ろした。


「力が無いっていうのがわかったでしょ。力がない人らしい生き方をすればいいの」


力がない人らしい。
そうか、そういうことか。拍手の後聞こえてきた言葉と合わせ、私は納得がいった。


そういうことなんだ。


「はい。大人しく、女子らしくします」


先生はこれまで見たことがないような笑顔になった。
今ので確信が持てた。


先生は、女子らしい女子だけを残そうとしている。