二組女子と三組男子の試合が始まった。
深見と大洋が二人同時に投げる。


高速で二つの方向に飛んでいくボールに混乱し、二人アウトになる。痛そうだけど、この子たちは助かるんだ。
いや、外野から当てたら同じか。


ドッジボールだけど、男子も楽しそうにしてないなあ。
投げる前も躊躇してるし……当たったら痛がるとわかってるボールを投げたくないよね。


女子は次々と外野に向かう。
もうすぐ授業が終わる。そんな中である事件が起きた。


「もうすぐ時間だし、うまくいけば当たらずに済むかも」


当たらずに済む方法を探す会話だった。
それだけならいいんだけど、その方法がひどかった。


「あの子たちどうせ当たるしさ、盾にしちゃえ」


あの子とは、愛実たちだ。
止めたかったけど、そう話す子たちが怖くてできなかった。


その後起きる出来事に比べれば全然怖くないのに……。


話していた子たちは本当に盾にした。


二つのボールが可矢ちゃんに当たる。受け止めようとしたみたいだけど、空しく落ちる。


「うう……」


可矢ちゃんは後ろにいた愛実ちゃんに倒れこんだ。盾にした子たちはそそくさと逃げていく。


気まずそうにする男子。
可矢ちゃんは目を開けず、愛実ちゃんにもたれかかる。


「やっぱり女子は弱いわねぇ……」


「先生はっ……あのボールが当たっても、しっかり立っていられるんですか!?」


やめて愛実ちゃん、反抗したら……!


「口答えしないで!」


先生が二人に手をあげようとする。私は我慢できず、茜ちゃんの制止も振り切った。


先生を突き飛ばした。


「いつもはこんなこと言わないんです。私が代わりに責任を取ります」


震える声を押さえつけるようにして言った。のどが痛い。


「ああっ、先生違うんです!怒らないで!春菜ちゃんはつい動いてしまっただけで……元はと言えば私が悪いんです!」


愛実ちゃん、これ以上は止めて!
すると、可矢ちゃんのか細い声が聞こえた。


「私が……当たったから……愛実ちゃんも、春菜ちゃんも、関係ない……」


「関係なくないよ!そばにいたのに何も出来なかったし……」


愛実ちゃんは目を閉じたままの可矢ちゃんに呼び掛けた。