「うっわ最悪!ぶりっ子菌が移る!」


「なんで学校にいんの?」


「帰ってよ。あんたの顔見たくないし」


先生がいないのを見計らって輝石に暴言を吐く。どう見てもこの三人の女子が悪いのだが、輝石は言い返すことなく耐えていた。


「お前らこそなんでここにいるんだ?犯罪者は刑務所に帰れよ」


そこに一人の男子が現れ、容赦ない一言を投げかけた。


「やだ、犯罪者ってどういうこと?私何もしてないよー」


主犯の女子が作った声で男子に言う。


「もうー冗談だって。ていうか仙道君の冗談こそ笑えないよ」


「そうそう。仙道君ってそういうとこあるよね」


悪びれもしない三人のせいで怒りは限界を超えた。


「ぶりっ子菌だとか聞かれといてよくそれが通用すると思ったね。お前らがしてること、名誉棄損罪って言う立派な犯罪だよ。全く、思考回路が不可解で不愉快だね。もう二度と高田さんと俺に近づくな」


とどめに鋭い視線を三人の心に刺す。


「行こっ!」


取り巻きの一人が、何も言えず立ち尽くす主犯の肩を叩く。
三人はばたばたと走り去って行った。


「仙道君……ありがとう」


「どういたしまして」


「いつも助けてくれて嬉しい……けど、仙道君も目をつけられるかもしれないし……」


「気にしないでよ。僕はあんなやつら怖くない。……高田さん、やり返したって罰は当たらないと思うよ」


仙道がそう言うと、輝石は首を横に振る。


「私は穏やかに生きたいの。仕返しなんてしたら、それから遠ざかってしまう」


輝石のそういう優しいところが好きだった。
穏やかな生活をただ祈っているだけの輝石が、なぜこんな目に遭わなければいけないんだ。仙道は憤りを覚える。
先生も動かない。あんなやつらを志望校に受からせるのが輝石の平穏より大切なのか?


俺は諦めない。輝石が幸せに過ごせるようになるまで戦い続ける。
そう決意した仙道は市に相談したり、いじめてくる女子を撃退し続けた。


あの日まであと四カ月くらいのことだった。