柔らかくて強い春の強風が、私の髪をかき上げていった。髪を押さえた時、寒いなか外に出たあの日を思い出した。でも風と空気が全然違うな。
あの二人と、卒業したね、と笑いあえないことに違和感を感じた。卒業式に二人がいると信じ切っていたんだ。
私はどこにいけばいいの?一番生き残っている人が多いクラスの声を聞いて、寂しさがこみ上げてきた。
「春菜ちゃん」
茜ちゃんが後ろから肩に手を乗せてきた。体を小さくはねさせたあと、茜ちゃんを見る。
「茜ちゃん。お疲れさま」
「いやー話長かったよね。ていうか意味わからない政策を実行して、大事になったら公表して謝るとか何考えてるんだろうね。市長も謝ってたけど政策の事は知ってたのかな?」
「知っていたとは思うけど、学校でこうなるのは予想してなかったんじゃない?大抵の人がそうだと思う」
「政策に関わりがなさそうな議員も心にもないくせに謝ってたよね。本当適当に動いてんじゃないよって感じ」
「まあ大人にはいろいろあるんだよ」
私はそう言って苦笑いするしかなかった。ギリギリまで何もできなかった私には、本心でなくても謝る人を批判できない。
私もいつかは大人になって、なぜそうしなければいけなかったのかを知ることになるだろう。それはくだらない理由で、呆然とするかもしれないし、なら仕方がないと受け入れるのかもしれない。
「ああ、みんな意味なく殺されたんだね。満たされたのは大人の歪んだ欲だけで、死んだみんなは全てを失ったんだね」
茜ちゃんは何かを嗤うように目を歪め、吐き捨てた。
「あの政策は良い意味を残さないけど、みんな必死に生きのびようとして、必死に助けようともした。私たちが生きた時間には意味がある」
「何が言いたいの?死を美化してるみたいじゃん。二人は春菜を助けたけど、大抵の子は理不尽な理由で、何もできずに死んでるんだよ」
最近、茜ちゃんは自棄になったような言動が多くなった。生き残った人にも意味はない、殺されたことにも意味はない、全てに意味が無いと言って、手首の傷が増えていく。
罪悪感が茜ちゃんの心を壊したんだ。
私は意味が無い、とは言い切りたくない。それでも私は二人がいたから生きている。二人を背負って生きていくんだ。
「人生が無駄だったとは言わせない。私は忘れない。私が何かを成し遂げることで、二人の力もこの世界に残せたって言えるんじゃないかって……」
二人だけじゃない。
ここで動くことを諦めたらあの人たちの思うつぼなんだ。
「辛くないの?前を向き続けるのって」
可矢ちゃんの声がする。
辛い、けど、俯くのはもっと辛くて怖いんだ。
「やっぱり春菜ちゃんは強いね」
強くないよ。
「春菜ちゃんの気持ちは嬉しいけど、無理しないでね」
愛実ちゃんの優しい笑顔が浮かびあがる。
「辛くなったら限界が来る前に休むんだよ」
「春菜ちゃんの漫画楽しみにしてるね」
限界まで追い詰められた可矢ちゃんと、前から漫画を楽しみにしていた愛実ちゃん。二人とも優しくしてくれる。
私は一人じゃないから大丈夫。
「よかった」
二人の声が重なった。後ろを振り向くと二人は手を振って消えた。
けど、まだ温もりはこの胸に残っている。
あの二人と、卒業したね、と笑いあえないことに違和感を感じた。卒業式に二人がいると信じ切っていたんだ。
私はどこにいけばいいの?一番生き残っている人が多いクラスの声を聞いて、寂しさがこみ上げてきた。
「春菜ちゃん」
茜ちゃんが後ろから肩に手を乗せてきた。体を小さくはねさせたあと、茜ちゃんを見る。
「茜ちゃん。お疲れさま」
「いやー話長かったよね。ていうか意味わからない政策を実行して、大事になったら公表して謝るとか何考えてるんだろうね。市長も謝ってたけど政策の事は知ってたのかな?」
「知っていたとは思うけど、学校でこうなるのは予想してなかったんじゃない?大抵の人がそうだと思う」
「政策に関わりがなさそうな議員も心にもないくせに謝ってたよね。本当適当に動いてんじゃないよって感じ」
「まあ大人にはいろいろあるんだよ」
私はそう言って苦笑いするしかなかった。ギリギリまで何もできなかった私には、本心でなくても謝る人を批判できない。
私もいつかは大人になって、なぜそうしなければいけなかったのかを知ることになるだろう。それはくだらない理由で、呆然とするかもしれないし、なら仕方がないと受け入れるのかもしれない。
「ああ、みんな意味なく殺されたんだね。満たされたのは大人の歪んだ欲だけで、死んだみんなは全てを失ったんだね」
茜ちゃんは何かを嗤うように目を歪め、吐き捨てた。
「あの政策は良い意味を残さないけど、みんな必死に生きのびようとして、必死に助けようともした。私たちが生きた時間には意味がある」
「何が言いたいの?死を美化してるみたいじゃん。二人は春菜を助けたけど、大抵の子は理不尽な理由で、何もできずに死んでるんだよ」
最近、茜ちゃんは自棄になったような言動が多くなった。生き残った人にも意味はない、殺されたことにも意味はない、全てに意味が無いと言って、手首の傷が増えていく。
罪悪感が茜ちゃんの心を壊したんだ。
私は意味が無い、とは言い切りたくない。それでも私は二人がいたから生きている。二人を背負って生きていくんだ。
「人生が無駄だったとは言わせない。私は忘れない。私が何かを成し遂げることで、二人の力もこの世界に残せたって言えるんじゃないかって……」
二人だけじゃない。
ここで動くことを諦めたらあの人たちの思うつぼなんだ。
「辛くないの?前を向き続けるのって」
可矢ちゃんの声がする。
辛い、けど、俯くのはもっと辛くて怖いんだ。
「やっぱり春菜ちゃんは強いね」
強くないよ。
「春菜ちゃんの気持ちは嬉しいけど、無理しないでね」
愛実ちゃんの優しい笑顔が浮かびあがる。
「辛くなったら限界が来る前に休むんだよ」
「春菜ちゃんの漫画楽しみにしてるね」
限界まで追い詰められた可矢ちゃんと、前から漫画を楽しみにしていた愛実ちゃん。二人とも優しくしてくれる。
私は一人じゃないから大丈夫。
「よかった」
二人の声が重なった。後ろを振り向くと二人は手を振って消えた。
けど、まだ温もりはこの胸に残っている。



