前駆たちの望み

学校には卒業式と書かれた立て看板があった。
ここで写真を撮りたいな。


下駄箱から上靴を取り出して履く。この靴が血を浴びるようなことがありませんように。


ここで小さな悩みが出来た。
いつもの階段を使うか、それとも違う階段を使うか……。いつもの階段は昨日の嫌なことを思い出すから、何となく上りたくなかった。けど、最後の日だしいつものルートで行きたいとも思っている。


大丈夫、あいつらは多分いない。
手すりを掴み、今までありがとうと感謝の気持ちを込めて上った。


教室では、二つの空席の側で泣いている子たちがいた。
もう一つの空席、家瀬さんのところはぽっかりと空いていた。私は花の絵を描いて、家瀬さんの席に近づいた。


本物は持ってないし、先生に見つかりたくない。その絵を引き出しの中に入れる。イラスト部だったから絵には自信がある。気に入ってくれるといいな。
顔を上げると、机に文字が書いてあるのが見えた。


手が赤黒く染まった。私はもう後戻りできない。けどそれももう関係ない。だって私は死ねるのだから。


死ねる気がしない。岩手さんのおかげとも、岩手さんのせいとも言える。


おそらく次の時間で死ぬ。最善の最期でありますように。


家瀬さん、死ぬ予感があったの……?
最善の最期は誰かを庇って死ぬこと?死ねるって……家瀬さんは死にたがっていたの?


家瀬さんの気持ちの一部が見えた。それは衝撃的で、まだ冷静に解釈できそうにない。