青野さんは真っ青になって、私のせいだ……と口を動かし続けた。違う、青野さんのせいじゃない!
犠牲者は出さないって言ったのに、自分がその一人になるなんて……。
家族、クラスの皆、部活の友達……そして最後に浮かんだのは、春哉と家頼さんだった。
「失礼いたします」
重く冷たい空気を破り、家頼さんが立ち上がった。
家頼さん……もしかして、助けてくれるの?
家頼さんなら皆が助かるように、先生を言いくるめてくれると思った。
「なんですか?」
「本当は、岩手さんは捕まっていました」
なるほど、確かに私、危うくなったことがある。
捕まえそうだった男子は優しかったし、私とも仲がいい。実は捕まえていましたと言ってくれれば、私は助かるかもしれない。
でも、そのとき家頼さんは捕まっていたから見ていないよね。じゃあ何て言うつもりなの?
「岩手さんは捕まりましたが、私は疲れたしもう走りたくないから、私が捕まったことにしてほしいと言いました。河口くんもそれでOKしてくれたので、私はここにきました」
「河口くん、本当ですか?」
「あっ、はい」
河口くんは、はいと言うしかなかった。今日は降参されたり、ありもしないことを認めることになったり……訳がわからなくなってるだろうな。
「そうですか……これでわからなくなりましたね」
先生は目を伏せ、溜め息をついた。やった、これでみんなが助かる……!
「本当に捕まったのは岩田さん。でも、家頼さんはそのとき疲れていた。逃げきる可能性は限りなく低いでしょう。最後に残るのは青野さん、ということでいいでしょうか?」
青野さんが目を見開いた。
青野さんは最後まで隠れていたけど私がつれてきた。何て言えば助けられる!?
誰も殺さないよう結果をうやむやにしなくちゃ……私が全力で考えていると、先生は青野さんを引きずり出した。
私が引き剥がそうとする前に、家頼さんが先生を拳で殴った。
「青野さんも運動は苦手で、ここまで逃げ延びたのもうまく隠れたからです」
そんなことしたら、死ぬよ……!?聞いてなかったの!?
「そうですか……。まさか家頼さんがこんなことをする人だとは……でも、炙り出せてよかったです。これで平和が保たれる」
先生、何を言ってるの!?家頼さん、本当は真面目でいい子なんだよ!?
家頼さんは怯えるどころか笑みを浮かべていた。
「違う、何かの間違いで……」
「岩手さん、もういいです。私、満足していますから」
とても穏やかな声だった。
「でも……残された人は悲しむんだよ!?」
「悲しむ人は悲しみますが、喜ぶ人は喜ぶだけです。私の場合、喜ぶ人が多いからそれを選ぶだけです」
家頼さんが死ぬことを望む人なんて目の前の先生だけだよ?
家頼さんは心に何を抱えているの?何で死を選ぶの?
「皆さんの前途が輝いてますように。幸運を」
家頼さんはちらっと振り向いて、人差し指に中指を重ねた。
そしてまた前を向いた。私はあの後ろ姿を忘れることは無いだろう。
「本性を隠し続けるような人に爆弾を使うのはもったいない」
先生は拳銃を取り出した。そんな物も持ってたの……?
銃声が響き、家頼さんの心臓を撃ち抜いた。
私は口を開けたまま立ち尽くしていた。のどがはりつくのを感じてごくりと呑み込んだ。
家頼さんは死んでも地面に体を落とすことはなかった。
犠牲者は出さないって言ったのに、自分がその一人になるなんて……。
家族、クラスの皆、部活の友達……そして最後に浮かんだのは、春哉と家頼さんだった。
「失礼いたします」
重く冷たい空気を破り、家頼さんが立ち上がった。
家頼さん……もしかして、助けてくれるの?
家頼さんなら皆が助かるように、先生を言いくるめてくれると思った。
「なんですか?」
「本当は、岩手さんは捕まっていました」
なるほど、確かに私、危うくなったことがある。
捕まえそうだった男子は優しかったし、私とも仲がいい。実は捕まえていましたと言ってくれれば、私は助かるかもしれない。
でも、そのとき家頼さんは捕まっていたから見ていないよね。じゃあ何て言うつもりなの?
「岩手さんは捕まりましたが、私は疲れたしもう走りたくないから、私が捕まったことにしてほしいと言いました。河口くんもそれでOKしてくれたので、私はここにきました」
「河口くん、本当ですか?」
「あっ、はい」
河口くんは、はいと言うしかなかった。今日は降参されたり、ありもしないことを認めることになったり……訳がわからなくなってるだろうな。
「そうですか……これでわからなくなりましたね」
先生は目を伏せ、溜め息をついた。やった、これでみんなが助かる……!
「本当に捕まったのは岩田さん。でも、家頼さんはそのとき疲れていた。逃げきる可能性は限りなく低いでしょう。最後に残るのは青野さん、ということでいいでしょうか?」
青野さんが目を見開いた。
青野さんは最後まで隠れていたけど私がつれてきた。何て言えば助けられる!?
誰も殺さないよう結果をうやむやにしなくちゃ……私が全力で考えていると、先生は青野さんを引きずり出した。
私が引き剥がそうとする前に、家頼さんが先生を拳で殴った。
「青野さんも運動は苦手で、ここまで逃げ延びたのもうまく隠れたからです」
そんなことしたら、死ぬよ……!?聞いてなかったの!?
「そうですか……。まさか家頼さんがこんなことをする人だとは……でも、炙り出せてよかったです。これで平和が保たれる」
先生、何を言ってるの!?家頼さん、本当は真面目でいい子なんだよ!?
家頼さんは怯えるどころか笑みを浮かべていた。
「違う、何かの間違いで……」
「岩手さん、もういいです。私、満足していますから」
とても穏やかな声だった。
「でも……残された人は悲しむんだよ!?」
「悲しむ人は悲しみますが、喜ぶ人は喜ぶだけです。私の場合、喜ぶ人が多いからそれを選ぶだけです」
家頼さんが死ぬことを望む人なんて目の前の先生だけだよ?
家頼さんは心に何を抱えているの?何で死を選ぶの?
「皆さんの前途が輝いてますように。幸運を」
家頼さんはちらっと振り向いて、人差し指に中指を重ねた。
そしてまた前を向いた。私はあの後ろ姿を忘れることは無いだろう。
「本性を隠し続けるような人に爆弾を使うのはもったいない」
先生は拳銃を取り出した。そんな物も持ってたの……?
銃声が響き、家頼さんの心臓を撃ち抜いた。
私は口を開けたまま立ち尽くしていた。のどがはりつくのを感じてごくりと呑み込んだ。
家頼さんは死んでも地面に体を落とすことはなかった。



