「あ」


ふと彼女が声を出す。
その視線は僕のキャンバスに向かって伸びていた。


「それ、すごく綺麗......
そういえば貴方名前は??」

目を細めて笑う彼女はとても綺麗に感じて、どこか遠くに行きそうなそんな感じがした。


「僕は田原颯。美術部なんだ。」


「へぇ~!男の子なのに珍しいね!私は羽山奏(ハヤマカナデ)!フルート吹いてるの!」


「フルート?」


そういえば羽山奏ってどこかで聴いたことがあるような....


「そう、これが私の楽器!」


そう言ってシルバーのフルートを見せてくれた彼女は楽器を愛おしそうに、まるで子供を見ているようなそんな表情で言った。