逢はそれ以外何も言わなくて、他の人は驚いたり、謝ったりするのに。 この沈黙が、逆に心地よかった。 「逢、帰ろ」 俺は椅子から腰を上げて座っている逢に手を差し出す。 「あ、ありがと…」 逢はそう言い、俺の手を取って立ち上がった。 30センチくらい横を歩く彼女に少し落ち込んで、それでも今の俺たちの距離はこれくらいなのだと思い知った。 「…逢」 学校を出て、歩道橋の階段を上がりながら口を開く。 「なぁに?」