「何もいらん、本心だ。お前はかっけぇ」

「…わかったから、もういいって。ほら行くぞ」


「照れてんなよ〜、カッコイイとか言われ慣れてんだろ。中学でもモテてたかんな〜お前」

羨ましい、と呟いてダークブラウンの髪を揺らす。

「お前もたいがい一緒だろ」

「違ぇよぜんぜん〜、はぁ那知の顔になりたい…全世界の女に好かれたい」


「…俺は知らねぇやつに好かれたって嬉しくねぇ」

理久の発言にひきつつ、呟く。

「ひくなよ…」

体育館に向かいながらする、くだらない話。


“全世界の女に好かれたい”

そんなのいらない。


俺は…逢が、逢だけが。

俺のこと、好きって言ってくれれば…


それで、十分なのに。


どうして、本気で望むものは手に入りずらいんだろう。