歩道橋を降りて、しばらく歩くと見える俺達が通う高校。


俺たちを優しく撫でるように吹いた春風は桜を攫って舞散らかす。

「わ、綺麗…」


長い黒髪を右手で抑えて空を見上げる彼女は、それに劣らず綺麗だったけれど、それを言葉にする度胸は持ち合わせていなかった。


「行こう、逢」

舞う桃色の綺麗さに立ち尽くす逢の手を引いて笑顔を向けると少し照れたように俯いて、うんと頷く。


「あ、那知くん何組なの…?」

入学説明会の時に決まっていたクラス。


「俺、2組だよ」

「え、私も…」

すごいね、と嬉しそうに笑う。