「…えっと、ここから、どう行くんだっけ?」

ここからターミナルの階段を登って歩道橋に出るのだけれど、逢が別の所に行こうとするから呼び止める。


「逢、こっち」

「あ…っ、ごめんね」

たたっと駆け足で俺の元に来る彼女が可愛くて、久しぶりのような気がして頬が染まる。


「えっと、あの……もしかして、どこかで会ったりとか、してた、かな?」

戸惑いながら聞いてくる逢にハッとして、なんて言い訳をしようかと考えた。


「あ、まぁ、俺が一方的に、ね」

うわ、俺気持ちわりぃ。

言い訳下手くそかよ……


自分で自分に落ち込んでいる俺をよそに、彼女はケロッとした顔で「そうなんだ」と呟いた。


「…勝手に“逢”とか呼んでごめんな?」

眉を下げて謝ると、逢はふるふると首を横に振ってふわりと微笑む。

すっげ可愛い…


「大丈夫だよ、名前、教えてくれる?」


そうか、自己紹介からだよなぁ。

優しく包み込むような彼女の声に、俺の混乱状態だった頭も次第と落ち着いてくる。