“逢は、ほんとに、俺に好かれる気ある?”


あの問えなかった言葉を紡いでいれば、彼女はもしかしたら、顔を真っ赤にして、また『うん』とだけ言っていたのかもしれない。


それが、照れ屋で、口下手で、恥ずかしがり屋の彼女の、精一杯だったんだって、今なら、もう欲張ったりしないのに……


何を、あんなに不安で、あんなに欲張っていたんだろう。

大好きで、大好きで、大切な彼女が、ただ傍に、隣にいるだけで幸せだったのに。


あんなに幸せなこと、ないのに。


彼女が、俺のそばで頬を染めてくれる。

それでとてつもなく大きな幸せだったのに。


俺は、なんて勘違いをしていたんだろう。


幸せが幸せを求めて、今ある幸せなんて普通であると決めつけて。

それでいてまだ足りないなんて、欲張りで、横暴で、なんて馬鹿げているんだ。


「…馬鹿だ…俺…」