「これが、逢の鞄に入っていたんだ」



葬儀が終わり、目も鼻も赤くして、涙のあともまだ残っている彼女の父親から受け取ったもの。



「……青色の、手紙…」


また見覚えのある景色に、目眩がしそうだ。


「…那知くん……自分を、責めないでくれよ…?」


「…え、」


逢の父親の涙ぐんだ真剣な声に、耳をすませた。


「あの子が亡くなったのは…君のせいだとは、誰も思っていないから。…お願いだから、自分を責めないでくれ」


その言葉はきっと、さっき俺がこの人に頭を下げたことを言っているんだろう。


「……俺が、死ぬはずだったんです…それを、庇ったから…」

俺がこぼした涙を見つめて、彼はゆっくりと首を横に振る。


「違う…違うよそれは、那知くん。私は君に感謝しこそすれ、責めるなんて…」

感謝…?


「あの子の…逢の、幸せな毎日には、いつも君がいたんだろうなぁ」

「高校に入ってからは、会話の中に何回“那知”という名前を聞いたかもうわからないよ。私が少し嫉妬するくらいにね」

え……


「あの子は、君に出逢って…びっくりするほど、幸せそうに笑うようになったんだ」

「あの子の笑顔を奪ったのは、私のせいでもあるから…だから、それを取り戻してくれた君には感謝してもしきれないよ」



優しすぎる笑顔に、涙があふれる。

精一杯首を横に振って、涙を拭った。