「理久と日向が心配しそうだし、そろそろ戻ろうか」
ミルクティー色の髪をキラキラ揺らして、彼は精密に作られた笑顔を私たちに向ける。
那知のほんとの笑顔は、もっと…こう……、
私の心臓を、鷲掴みにするから…
「…逢?……ほら、いくよ」
少し先にいるひろくんと那知が私を不思議そうに見つめていて、那知の声に少し駆け足で二人の元へ行く。
さっき…那知、私に『いくよ』って言った時、手を伸ばそうとして、躊躇った…?
多分、いつもなら…私に触れてたのに。
三人で元来た道を戻る間も、私の頭の中はそんなことでいっぱいだった。
そんなこと、というのは…ほとんど、いや…全部、彼のことだとは、自分でも気付いていなかった。
「あー!やっと戻ってきた〜どこ行ってたの?」
視界に私たちを見つけた日向は怒ったふりをして頬を膨らませる。

