君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。



心臓が、止まりそうだった。


それは今の話を聞かれていた、とわかってからの羞恥心からか、はたまたそれ以外の感情からなのか

自分の心情にも疎い私には分からない。


それでも何か、今の話を、この人には聞かれたくなかったと、そう思った。



「───那知……」


「…あーー、悪い…聞くつもりじゃなかったんだけど、ちょうどそこで涼んでたんだよ…」

気まずそうに首の後ろに手を当てて手を泳がせる。


「…えっと、まぁ……二人、付き合うんだよな?……おめでとう」

「…ありがとう、那知」

照れくさそうに頭をかいて那知と話すひろくんを横目に、私は那知の端正な顔をじっと見つめる。


那知の顔は笑っているのに、何だか無機物のように感じられて少し背筋が凍った。


無機物、とは違うかな。

お面、とでも言うべきか、簡単に言えば、那知の表情が嘘に見えたのだ。


…那知は確かに笑顔なのに、悲しそう、なんて…バカみたい。


そして…それ以上に彼の『おめでとう』に悲しんでる自分がいて、この気持ちの真意がわからなくて、頭が痛くなった。