「ひろくんが、それでも、いいなら…」
「いいっ!いいよ、全然、いいよ……」
私の手でも握りそうな勢いでそう言うひろくんが少し可笑しくなっちゃって、小さく笑った。
「…ふふ、ありがとう」
にこりと笑うとひろくんは嬉しそうに、少し照れくさそうにはにかむ。
「…じゃあ、私と、付き合ってくれる…?」
「それは…こっちのセリフだよ…」
眉を下げて、笑う。
「雪白、俺頑張るよ。雪白が俺を好きだって想えるように」
「うん、ありがとう…嬉しい」
今日から、恋人。
初めての、“彼氏”という存在ができた日。
私は那知のことを思い出して、隣に居るひろくんを見て、なぜだかわからないけれど
少し晴れない気持ちと、泣きそうになった自分に謎が深まるばかりだった。
沈黙に、小さな音が鳴った。
それを文字に表せば、「ジャリ」という感じだろうか。
それは死角になっていた近くの洞穴のようなところからで、恐怖心と反射から顔を上げる。

