「突然、すみません」
「少々遅れてしまいました」
…誰なんだ、なんなんだよ。
そう考えている俺の目の前にスっと現れた黒いスーツを身にまとった男。
「……っ!?…誰だ、お前」
そいつはにこりと笑って、真っ黒な髪をふわりと揺らす。
「申し遅れました、私、“黒沼”と申します」
やけに軽そうな体に、床にはそいつの影もない。
疑問と警戒が同時にやってくる。
…知らねぇよ、何なんだよ。
変質者のようで、きっと違う、人間ではないようなヤツに警戒心をいっそう強める。
そいつの、ただならぬオーラのようなものに俺はその場から離れることが出来ずにいた。

