無性に、泣きたくなった。


「逢」

そう呼んでも、俯いたまま、顔は見えないまま。


「逢、こっち向いて」

ゆっくりと俺を見た逢の顔は無表情のように見えるけれど、前の世界でも何度か見た、泣きそうな顔。


今すぐにでも、そばに行って抱きしめてあげたいのに。

この通路分の距離が遠くて、遠くて、見えないのに壁があるように感じた。


「これから、辛いことあったら、全部俺にぶつけて。八つ当たりでもいい、理由も話さなくていい。逢が笑顔になれるなら、俺が受け止めてやる」