「私が、母親に似てたら…すぐに染めてたと思うよ」 …え? 「私、あの人大嫌いだから」 俯いてそう言った逢の顔が、黒い髪に隠れて見えなくて。 『なーくんが、別れたいなら…』 あの日を思い出した。 いつも、大事な時に君の顔は見えない。 なぁ逢、こっち向いてよ。 母親のことを“あの人”と呼んだ逢が、“大嫌い”だと言った逢が。 どんな顔をしているのか、わからなくて。 俺はまだ逢のことを知れなくて。