「わー!スーパーなんて久しぶりー!」
「…だろうね」
考えた結果、今回はデパ地下のお惣菜をやめて…私は近所の激安スーパーにやって来ていた。
「おねーさん!僕、もやし食べたい」
「もやし!?」
両手に一袋10円のもやしの袋を持って、楽しそうにカラーサングラスからのぞく瞳を輝かせている音くんと一緒に。
先ほど私に電話をかけてきた知らない番号の主は音くんで…今日は彼が、私のナイト役なのだという。
「好きなの?もやし」
「うん、すっごい好き!貧乏生活してるとき、ほぼ毎日もやし食べてたもん」
音くんにもそんな時代が…
当たり前だけれど、今や人気アイドルのphaseにも極貧時代はあったのだと実感する。
「頑張ったんだね…今までたくさん」
「好きでやってることなんだから、自分が頑張るのは当たり前だよ!それよりもやしから脱出させてくれたファンのみんなのために、これからももっともっと頑張らないと!」
へへっと冗談交じりに言いながら、目の前の音くんはにこにこ笑っているけれど。
「すごいね、音くん。そうやって言えること…ほんとかっこいいと思う」
「えー?そうかな…でも嬉しいな。ありがと、おねーさん」
芸能界という世界で生きること。
それがどれだけ覚悟のいることで大変なことなのか…きっと私には一生わからないと思う。
だけど、その世界で夢を追いかける音くんの強さみたいなものを、垣間見た気がした。

