「俺が何だって?」



ドカッと音を立てて、私の隣に勢いよく座った男に背筋がゾワッと寒気に包まれた。



「お、噂をすれば瀧のお出ましだ」


「全然、嬉しくない登場なんですけど」


「あ?嬉しすぎて直視出来ねぇの間違いないか?」



私の肩にグイッと腕を回して、無理やり私の顔を自分へと向けた瀧が顔をしかめながら威嚇してくるから、勘弁してよと言わんばかりに睨み返す。



「もう!暑苦しいよ、瀧!離して!」


「お前なぁ、この俺がわざわざ肩組んでやってんのに嬉しそうな顔の1つくらいしろよ」


「何を喜べっていうのよ!!!」



私と瀧のやり取りを見ていた和葉ちゃんが『はいはい、痴話喧嘩はその辺にして』と半分呆れたように次の講義の準備を始めたのを横目に、


私はやっとの思いで肩に乗っかった瀧の重たい腕を振り払った。



「可愛くねぇ〜〜!!!」


「瀧に可愛く思われたって仕方ないもーん」



ふんっ!とわざとらしくそっぽ向いて、和葉ちゃんを見習って次の講義の準備を始める私に瀧は分かりやすく不満顔だ。