「...咲誇もキャラ変わったなぁ。知り合ってから、まだたったの1日なのに」




ポツリと呟き、圭太は薄く笑った。


持っていたらしい真新しいビールが、放心状態の俺の横に置かれる。




「すごいな。お互いを変える存在か」


「...どういう意味だよ」


「考えるな、感じろ...ってやつ?
蓮央もそろそろ自分の気持ちに向き合ってみてもいいんじゃねーの?」


「そんなの...出来るわけねぇだろ」


「それは蓮央次第だよ。
お前が決めたことに口出すつもりはねぇし」




頭の中がぐるぐるしてる。


こんなにも俺をかき乱す女、何年ぶりだ。




「...結局はさ、」




口を開いた圭太の目線は、次は零羅に注がれる。


歩と口喧嘩を繰り広げる零羅。


この男が、生涯で唯一愛した女。


アイツは自分の命よりも大切だ、と、圭太は毎日のように言う。




「お前も咲誇も、同じものに怯えてる。
同じ痛みが分かるんだから、それを癒し合うことも出来るだろ」


「...そんなに簡単じゃねーよ」


「あぁ、今のままだとな。
もう少しお互いが前に進めたら、蓮央のその悩みも解決するんじゃねーの?」




そう言って、圭太は下に降りていった。


1人その場に残った俺。


本当は行って盛り上げなければいけない立場だが、身体が動かなかった。



自分が何をすべきか、どうすべきか。


皆目見当もつかなくて。





「...絵里(エリ)...」





ただ、二度と会えない彼女の名前を呼ぶことしか出来なかった。