ドバドバドバ。
手はビールまみれ、足元もビールまみれ。
...マジかよ。
圭太から受け取った大量のティッシュでその場を拭いて、なんとか解決した。
「何にイラついてんだよ、蓮央」
「...あの2人、何であんなに笑ってんだ?」
「あの2人って...真浩と咲誇か?」
「そうだよ」
あの笑顔は...他の男に見せたくない。
何でか分からねぇけど、そう思う。
アイツは俺のもんじゃないし、ましてや誰のものでもない。
なのに...
こんなにも『手放したくない』と思うのは、何でだ?
「...蓮央、お前、変わったよな」
「変わった?...俺が?」
「あぁ。
咲誇をここに連れてきたのもそうだけど、昨日からお前らしくない行動ばっかだよ。
今までは女に関わろうとすらしなかったろ」
「...まぁ、そうだけど。
俺がアイツを連れてきたのはただの気まぐれだし、深い意味は無い」
「今だって咲誇のこと目で追ってんのに?」
...はぁ。
何で分かるかな、この男は。
圭太の言う通り、俺はずっとアイツを見ていて。
意識せずとも勝手に見てしまう。
そして、蘇るのは、あの笑顔。
圭太や諒真の掛け合いを見ながら密かに笑ったときの咲誇の笑顔が、何度も何度も脳内でリプレイされる。
反則だろ、と思った。
ひたすらムスッとして無表情だった咲誇が、まさかあんなに柔らかく笑うなんて。
あんなに...華のように笑うだなんて、思いもしなかった。
...まじ、反則すぎ。