「...あー。裏切り者じゃん」
冷たい声が、心に刺さる。
面と向かって言われるとやっぱりキツい...。
でも、そんな雰囲気を出しちゃダメだ。
私は裏切り者なんかじゃない。
強く強く、唇を噛み締める。
俯いた私の耳に、二階堂の笑いを含んだ声が聞こえてきた。
「こりゃあすげー修羅場だな。
元カレと今カレ、元カノと今カノがそれぞれご対面ってわけか?」
「はぁ?何言ってんだ、二階堂。
こいつに彼氏なんかいるわけねーだろ」
「いや、そこにいんじゃん。
名の知れた『青髪の蓮華』さんがよ」
「青髪の蓮華...だと?」
翠斗の視線が、蓮央に移る。
上から下まで品定めするように見てくる翠斗に、彼は僅かに顔を顰めた。
私を自分の背後に隠したままで、手を繋いでくれる蓮央。
それだけで少し安心できた。
「...なるほどな。【睡蓮】の総長か」
「その通りだ。
言っとくけど、今更惜しくなっても咲誇は返さねぇからな」
「...バーカ、誰がそんな裏切り者の女を惜しがるかよ。俺には奈緒がいるんだよ。
そいつより何万倍もいい女の、奈緒がな」
「...裏切り者、か」
「そう。
だからお前も、そいつとは早く別れた方がいいぞ。本性隠してる猫かぶりだからな」
...やめてよ。
蓮央の前で、そんな事言わないで。
そう思うのに、何ひとつ言い返せない自分が悔しい。
もう...ここから去りたい。
こいつらと顔を合わせていたくない。
放っておいて、向こうに行こう...。
その一心で蓮央の袖を引くけど、彼は翠斗たちを見据えたまま動かなくて。
ただ、ふっと笑いをこぼした。


