「なんか言えよ、裏切り者!!」
「...黙れ」
「あぁ?聞こえねぇよ〜?」
「...黙れっつってんだよ!!!」
...手が、出た。
脳が命令する前に。
5人の男をあっという間に気絶させた私。
大して動いていないにも関わらず、すごく息が切れた。
視界の隅で、さっきまで殴られていた1人の男が呆然としていた。
...まずい、顔を見られたな。
私は今フードをかぶってないから、女だということが丸わかり。
この私が〝黒薔薇〟ってことはバレてはいなそう。
でもさっきの会話を聞かれたのは面倒だ。
早く行こう。
「...っ、待て!!」
無言でその場を立ち去ろうとすると、呼び止められた。
結果論とはいえコイツらから助けてやったのに、なんで命令形なんだか...。
「あんた...まさか【桜蘭】の...?」
「...そうだと言ったら?」
「っ...」
言葉を失ったらしい男。
そりゃそうだ。
裏切り者の元姫、本田咲誇サンがこんなところにいるんだから。
まぁ...この男は【桜蘭】じゃないみたいだし、どうでもいいけど。
「じゃーね。お大事に」
そう声をかけて、私は路地を抜けた。


