肩で息をしながら、蓮央が走ってきた。
心配げに私を見つめた彼は、私の頬に手を当てた。
「大丈夫なのか...?」
「あ、うん...。私は、大丈夫だよ。
蓮央こそ何でここに...?」
「真浩から聞いた。
幹部全員集めて王蘭に来いって、歩から連絡が入ったって」
歩、いつの間にそんな連絡をしていたんだろう。
もしかして、こうなることは予想出来てたってこと?
二階堂の計画を知ったうえであらかじめ連絡してたのかもしれない。
だから『あと10分』って言ったんだ...。
私の無事を確認し、安堵した表情になった蓮央は、二階堂に向き直る。
対して二階堂は、驚いたように目を丸くした。
「お前はまさか、『青髪の蓮華』...?」
「そういえばそういう名前もあったな。
本名は南 蓮央だ」
「チッ...。面倒なのが来やがった」
【睡蓮】の幹部全員に囲まれ、たじろぐ二階堂。
廊下に繋がる2つのドアの前には諒真さんと圭太が立っているため、逃げられない。
これぞまさに形勢逆転。
到底勝ち目がないと踏んだのか、二階堂は乾いた笑いを零しながら両手を上げた。
「分かったよ。今回は俺の負けだ」
「あのな、勘違いすんな。この勝負に今回も次回もねーんだよ。
総長の所に案内しろ。決着をつけてやる」
「はっ...?
お前こそ勘違いしてんじゃねぇぞ、青髪。
今回に限っては、こっちが引いてやるっつってんだ」
「負けが確定してんのに随分と上からだな」
「...負けるのはお前らの方だ。
【睡蓮】は絶対【桜蘭】には敵わない」
その口調は強がっている風ではなく、絶対的な自信が感じられた。
どうしてそこまで強気でいられるのか分からないけれど、彼らには勝算があるらしい。


