目の前に現れたのは、一台のバイク。
壁にぶつかるスレスレで方向転換し、どこかの高校の制服を着た小柄なライダーは、私たちの方を向いた。
ヘルメットをとると、緑色の髪があらわになる。
私のよく知るその彼は、ニコッと天使の笑みを浮かべた。
「やっほ〜、咲誇ちゃん」
「ま、真浩...?」
「歩からさっき連絡もらってね、学校抜け出してきちゃった〜。
向かいの建物からバイク借りて飛び込んでみたけど、上手くいったね!」
ヘルメットを投げ捨てて、真浩はバイクから降りた。
ポカンとする私と二階堂を素通りし、歩の方に近づいていく。
「歩、大丈夫?」
「...腕が使えねぇ。他は平気だ」
「そっか...。遅くなってごめんね」
「そんなことより窓ガラス割りやがったことを謝れよ。俺が修理代出すんだぞ」
「え〜、逆に僕の運転技術を褒めてよ〜。
無免許でこんなのできるの僕くらいだよ?」
「まぁ...度胸だけは認める」
「ッ、テメェら、何話してんだよ!!」
やっと現状を理解したらしい二階堂がキレた。
私から離れ、今度は真浩に掴みかかる。
でも当の本人は笑顔を崩さない。
「テメェはそいつの仲間か?」
「仲間じゃないよ。大親友だよ」
「同じだろうが!!
俺の計画を邪魔しやがって、絶対許さねぇ」
「...キミ一人じゃ、僕らには敵わないよ」
『僕ら』...?
でも真浩は一人で来たよね?
真浩の言葉に違和感を覚えた、そのとき。


