「咲誇(サキコ)」




名前を呼ばれ、振り返ろうとした瞬間、抱きすくめられる。


口角が勝手に上がっていく。


誰なのかは顔を見なくてもわかった。


何よりもあたたかい、彼の胸。




「どうしたの、翠斗(アキト)」


「んー、何となく。寂しそうだったから」




照れ隠しか、彼は私の髪に顔を埋める。


それがおかしくて、笑いながら空を見上げた。



オレンジ色に染まっていく秋の空。


私も彼も同じ色に染まる。



それがすごく嬉しく思えた。




「...寂しくなんてないよ」




この場所があって、あなたがいるから。


私は寂しくなんかない。



これからもずっと。