それを避けながら、歩は足だけで攻撃を仕掛けていく。
互いが殴り、そして殴られる音が響く。
でも足だけしか使わない歩は二階堂に押される一方で。
その圧倒的な威力を防ぎきることが出来ていない。
私も、やらなきゃ...!!
そう思って立ち上がると。
「お前は来んじゃねぇ!!」
歩の怒声が、私の耳をつんざく。
彼がここまで怒鳴ったことは、今まで一度も無かった。
何が起きても常に冷静で口調を荒らげたことなんてなくて。
...怖いと、思ってしまった。
なんで...そんなに無理するの。
私にも戦わせてよ。
それなりに戦えるんだよ?
なのに...なんでやらせてくれないの?
二階堂の蹴りが、歩のみぞおちに入る。
壁と二階堂に挟まれた歩は、低く呻いた。
助けに行きたい。
でもそうしようとすれば、歩が止める。
何したいのか分かんないよ。
このままじゃ死んじゃうじゃん...!!
「お前はよーく戦ったよ、赤髪。
...あとは、お前らの大事な姫がやられんのを大人しくそこで見てな」
冷たく言い放ち、二階堂は歩の腹から足を抜いた。
そして私に近づいてくる。
でもそんなの、私には見えなくて。
...歩が。
歩が、こんなになってしまった。
それが悲しくて悔しくて、無力すぎる自分が嫌になって。
どうしたらいいか分からない。


