「歩、これって何...?」


「情報収集の基本は盗聴。屋上に仕掛けた監視カメラで【桜蘭】の行動と会話は全部録画、録音してある」


「監視カメラ!?」


「アンタが【睡蓮】に来た頃仕掛けた」


「そ、そうなんだ...。
歩がそんなことしてるなんて知らなかった...」




歩はゲームをする手を止めて、つけていたヘッドホンを首にかけた。


どうやらモンスターを倒したみたい。


私の手からノートパソコンを取り上げて膝の上に置いてしまった。




「アンタが知らないのは当たり前だ。
蓮央さんに止められてたから」


「蓮央が?」


「画面越しとはいえ、トラウマを植え付けられた相手を見るなんて気分の良いものじゃないだろ。
だからカメラのことは言うなって指示されてた。アンタの前で操作するのも禁止」


「それでゲームばっかしてたの?」


「まぁ、そう。
アンタはもうアイツらに対して恐怖感を抱いてないみたいだから、許可が下りた」




蓮央...

最初から、私を気にかけてくれてたんだ。


私はあんなに嫌な態度をとってたのに。


水面下で【桜蘭】を倒す計画を進めながらも、私のことまで考えてくれてた。


分かりにくいけどたしかな優しさ。


それが私に向けられていたことがすごく嬉しくて、胸がじんわり熱くなった。