「私、最低だ...」


「知らなかったんだから仕方ねぇよ。
とにかく、下手に気を遣わないでやってくれ。そうなるのが嫌で、他人に言いたくないらしいから」


「...うん」




いつも通りに接する。

それが、私たちにできる唯一のことなんだ。


でも...私、このまま黙って見てるなんて、絶対にできない。


苦しんでいるなら、どうにかして諒真さんを助けたい。


だけど、本人は私たちにそうされることを望んでない。


迷惑をかけたくないって思ってるのかな...。




「どうすればいいの...」


「とにかく今は【桜蘭】に集中しろ。
アイツらからNo.1の座を勝ち取った後で、諒真のほうにシフトする」


「えっ...?蓮央、ちゃんと考えてたの?」


「当たり前だろ。仲間が苦しんでるのを放っておけるか」


「じゃあ諒真さんの方を先にやったほうがいいんじゃ...?」


「いや、まだだ。
No.1にすらなれない俺らが、巨大な組織に敵うわけがない。段階を踏まないと逆にやられる。
だから、世界No.1は最低条件なんだよ」




なるほど...!!

No.1にならないと、若沢組と同じ土俵にすら乗れないってことね。


でもよかった。


諒真さんを救う計画も、ちゃんとみんなの頭の中にあるんだ。



ホッとしたところで、ひとつの疑問が私の頭に浮かんだ。




「ちょっと聞きたいんだけど、どうして『若木組』じゃなくて『若沢組』なの?
組名は普通、組長の名前をとるんでしょ?
諒真さんとお父さんって名字違うの?」


「あー...。それがいろいろ複雑でさ」


「複雑って?」


「諒真の死んだ母親の名字が沢口っていうんだ。親父はその人を溺愛してたらしい。
で、『若木』と『沢口』の両方を取ろうってことで『若沢』になったとか」




た、たしかにちょっと複雑かも...。


諒真さんのお母さん、亡くなってたんだ。


私、色々失礼なこと聞いちゃったな...。