今までにないくらいの怖い顔をしている蓮央。


北苑に近寄り、その胸ぐらを掴みあげた。




「てめぇ...咲誇に何しやがった」


「俺は何もしてねぇ。被害妄想もいい加減にしとけよ」


「ふざけんな!!コイツにまで何かしやがったら、今度こそ殺してやる!!」


「ちょっ、蓮央、やめてよ...!!」




北苑は何もしてないよ。

私を助けてくれたんだよ。


それなのに何で、殴るの?


なんで...そんな怖い顔して怒ってるの?



北苑は口元から血を流しながら、蓮央の手を振り払った。




「お前に俺は殺せねぇよ。俺が『絵里』って言うと、すぐ負けるだろーが」




...また、絵里。


その名前を聞いて、蓮央は黙ってしまう。


そんなにも...彼にとって大切な人。


もうやだ...

絵里って名前、聞きたくない。


耳を塞いでしまいたい。




「蓮央、お前、そいつにまだ話してないんだってな。過去を語るのもこえーのか?」


「っ...、誰のせいだと思ってんだ!!」


「あぁ、そうだな。
じゃあこの俺から話してやろうか?
...お前の、死んだ恋人についてをさ」




...え?


死んだ...恋人?