向かったのは、2階にある空き教室。
穴場なのか、私たち以外には誰もいない。
教室の隅には歩のものらしきゲーム機とノートパソコンと充電器が置いてある。
...何しに学校来てるんだ、この人。
「歩はいつもここにいるの?」
「あぁ」
「本当は何組?ていうかちゃんと来てる?」
「4組。【桜蘭】の活動状況を報告するために、ここには毎日来てる」
4組ってことは...私と同じクラスじゃん。
いつも空席があるなって思ってたけど、あれは歩の席だったんだ...。
教室に来てないだけで、実はいたんだね。
留年してないみたいだから、一応勉強は出来るんだろう。
羨ましい脳みそですこと。
床に座り込んでさっそくゲームを始めた歩を横目で見ながら、私はボンヤリと屋上を眺めた。
...あそこが、私が前までいた場所か。
今は翠斗や奈緒がいるんだろう。
彼らとの日々に、未練なんかはない。
...いや、つい最近まではあったけど。
蓮央たちと出会ってから、それも少し和らいだ気がする。
屋上の上には青い空が広がっている。
まるで...彼の髪色みたい。
どうしたんだろう、私...。
こんなときまで蓮央のことを考えるなんて。
まだ知り合って少ししか経ってないのに、ふとした時に思い出すのは決まって蓮央のこと。
今何をしてるだろう、とか。
あのときこういう会話をしたな、とか。
そういうことに思考が奪われてしまう。
...ああ、もう。
何でこんなに蓮央のことばっか考えなきゃいけないの。
どうでもいいでしょ、あんな男...。


