下駄箱が偶然近かった彼は昇降口でこんなことを呟いた。
「石井てさ、好きなやついるの?」
急な問いかけに足を止め彼を見つめる。
『えっどしたの急に。』
彼のらしくない一言が引っかかった。
『分かんない。私気になってる人いるけど、それが好きなのかが分かんない。』
「そっか。」
『なんでそう思ったの?』
「いや…石井が苦いて言ってた気持ち今なら分かるなって思ってさ。」
『もしかして……』
いや、もしかしてだ。私の勘が正しければ……
彼をふと見ると顔は赤くて…………
「俺さ、気づいちゃったんだ。好きな人がいるって。」
ズキン。。
私の勘は見事に的中。でも何故か落ち込む自分がいて…
『…それを伝えるために私と一緒に帰ったんだ?』
それを隠しながら私は墓穴を掘る言い方をした。
いや、そういうことしか言えなかった。
「うん。お前男っぽいから相談しやすいしな。」
自然と心の中にみるみる溜まっていく黒い塊。
『少女漫画読んでる女になんてこと言うの。』
「話しやすいてことだよばーか。」
それって……
『ボソッやっぱり私って女の子扱いしてくれてないよね。』
「え…?」
マヌケな返事を聞いた私は遂に謎の感情を
爆発させた。
『何よ!変な時にポジティブになってさ!!』
「え、急にどうした。なんか俺気に触ったこと言った?」
ハッ………
私は彼の珍しい不安げな言葉を聞いた瞬間に
やってしまった……と後悔を募らせると同時に
だんだんと私の体全体が凍っていくのを感じた。
……そうだよ。なんで怒ってんの?こいつまだ悪いこと
言ってない。フォローしてくれてただけじゃん。
でもなぜだか悪気のない彼に八つ当たりをしてしまう。
謝りたいのにそれと反対の言葉を並べてしまう。
しまいには………
『相談なら幼なじみの美玲にすればいいじゃない!!
美玲の方が女の子を知ってるし、女子力あるし!』
「おい!」
私は彼を置いていき昇降口を抜け家にダッシュした。
走りながらポロポロ顔から落ちていく涙を溜めながら
私も気づいた。
私も………潮田への気持ちは……ちゃんと好きなんだ。
『潮田が好きだ……………っ』

